”憶える”

このお店は自分でも良いお店だと思ってる

私が数年通い続けている美容室の店長さんが言っていた言葉。


起業して会社を作ったり、お店を作ったりするのも、自分が描いた理想を形にする一つの手段で、その理想も千差万別だろうけど、その過程の中でタイトルのような言葉が出てくる場所や人はとても魅力的だなぁと思う。


子どもの頃、身内の紹介で知り合いがいる美容室で髪を切ってもらうことになって、それ以来大学生頃まで10年くらいは切ってもらってた。
昔からわたしの髪の特徴や好みを理解してくれていて、通いやすい場所にあったのも理由だった。加えて、髪を切った後には近くの大型ショッピングモールに出向いて、ご飯を食べたり、服を見たり、そんな楽しい時間があったのも大きい。
ただ、学生ではなくなってから髪の好みも変わって、何となくその常連感にも飽きて、何となく担当さんもマンネリになってきているのが感じ取れるようになったりもして、もう少し近場で良い美容室を探したい、そんな気持ちになって行かなくなった。


そこからは2〜3年はなかなか定着できるような美容室が見つからなくて、某予約サイトを絞り込み検索をしては、口コミを読み、一回行ってみて通える雰囲気ではないと直感で感じて行かなくなる。この繰り返し。
本当に自分に合うと思えるような美容室探しは途方もない冒険。


そんなある日に少し今までとは違ったやり方で美容室を探した。
いつもなら口コミが多くて、話題そうな美容室を手当たり次第に行ってみていたけど、口コミが少なくても質が良さそうな感想、HPを見に行ったりして、自分の好みに合致するように調べていった。
そうしていた中で今通う美容室を偶然見つけた。


原宿から少し歩いた路地裏にあってこじんまりとした雰囲気、穏やかそうなスタッフさん、入った途端に今まで感じた感覚とは少し違った。
家に近いような安心感、自然と会話が続くような穏やかさ。
その感覚はカウンセリングに入ってから、会計までずっと残り続けていて「ここなら通い続けられそう」と思えた。
数年に渡った、美容師探しが幕を閉じた日だった。


最近はコロナ禍の影響で美容室に行く頻度も少なくなってしまって、普段なら1ヶ月置きくらいには行っていたのに、2〜3ヶ月は行ってなかったと思う。
流石に髪のコントロールも効かなくなってきたので、公共機関を利用する恐怖に少し怯えながらも美容室に行ってきた。


美容室側も細心の注意を払っていて、マンツーマンの接客。
個人的には静かな空間でいろんな話をしながら、施術してもらえるので不謹慎ながらもこの体制が続いていって欲しいと思ってしまう。


家とは違うけど、何か落ち着けて穏やかにいられる空間。
家族でも友だちでもないけど、他人過ぎない他人でも大事な髪を守ってくれて自分の理想に近づけてくれる店長さん。
技術は素人目だし「良い・いまいち」って2択くらいでしか判断出来ないけど、人同士のコミュニケーションの部分では近すぎず遠すぎない距離感だからこそ、話せる事もたくさんあって、聴くのも楽しいし、すごく良い作用がある関係性だなと勝手に思ってる。
最近、身内と「嘘のないコミュニケーションをしよう」なんて話をしたけど、美容室の立ち上げ話を聴きながらその話と重なる部分があって、そこも通いたい理由の一つになってる。


私が何かをきっかけに東京を出る事になったり、どうしても通えなくなるハプニングが起こるまではずっと通い続けるんだろうと思ってる美容室の話。