”憶える”

ランドリー記念日

コインランドリーが好き。
とにかくコインランドリーという空間が好き。
特に夜が深くなった時のコインランドリーの居心地はなお最高。

 

誰もいない空間にカチカチと響く時計の秒針音と、一生懸命洗濯物を乾かす乾燥機のごうごう音と、コインランドリーとクリーニング屋さんでしか味わえない独特なガスの匂いと。

 

洗濯物を洗濯機に入れる時は何も考えず、たまに色物と白い服と黒い服は分けつつ、ひたすらに放り込んであとは全てお任せします。
お前に洋服たちの汚れを落とすのは託すからな、とかそんな気持ちで。
あとは洗濯が終わるのを待ちます。

 

洗濯機が気合で汚れを落としてくれた代償なのか、洗濯が終わった時には洗濯機の中で洋服同士がなんでこうなるのか分からないくらいに交じり合ってるため、力づくで全部を解きます。
洗濯の一通りの作業の中で9割くらいの体力を注いでいます。

 

そうしたら、乾燥機にバトンタッチです。
乾燥機に洗いたての洗濯物をぼんぼんと放り込みます。
テーマパークのキャストさんの「それでは、いってらっしゃ〜い!」のテンションで。
あとはひたすらに待つ。ただ待つ。
スマホを触るなり、筋トレをするなり、ぼーっとするなりして、とにかく待ちます。

 

何十分か経って乾燥が終わったら、ほっかほかでふっかふかの洋服たちをテーマパークのキャストさんの「おかえりなさ〜い!」のテンションで迎え入れます。
乾かしたての洋服たちに纏わりつくガスの匂いはアロマオイルと同じくらいにリラクゼーション効果があるので、一度大きく深呼吸して体内に取り入れます。
匂いに癒されたら、残り1割の体力を使って、洋服たちを乾燥機から引き揚げてコインランドリーでしか見たことがないであろうキャスター付きのデカいカゴに放り込みます。

 

そのあとはひたすらに洗濯物を畳む作業をします。
この作業、デジタルデトックスには非常に適していると思っています。洗濯物を畳むことと並行して作業をすることはまず困難なので。もはや瞑想です。
とにかく目の前にある洋服たちを人目を気にせずにひたすらに畳んでいくと自然と気持ちも整ったような気がしてきます。
これはある種、ゾーンに入ったようなものかもしれません。

 

洗濯して綺麗になった洋服たちはどうしても無碍にできず畳んでしまう、両足揃えて入れたはずの靴下の片割れを無くしてしまう、そんな人間の性を再認識できる貴重な時間でもあります。

 

時間は掛かるし、お金も少し掛かるけれど、このゆったりとした時間を過ごせるコインランドリーは私にとっては唯一無二の空間です。
あと、コインランドリーに来る人たちを見てみるのも生活が甲斐見えるので、なんとなく気持ちがワクワクするおまけもつくので尚更に好きです。

 

近々、コインランドリー巡りの旅をしてみようかと思っています。
あわよくばいつか自分でコインランドリーをやりたいです。それは夢のまた夢ですが。

 

ちなみに、この文を書こうと思った日、いつどの洋服に入れたか分からない千円が乾燥した後の洋服から二つ折りのままで出てきました。やっぱり最高だと思ったので、この日をランドリー記念日とします。